2009/04/29
役割を記述する
戦略的役割
戦略的役割の意味について、まず、確認しておきましょう。バランスト・スコアカード(Balanced Score Card)の4つの価値側面からわけて意義付け、さらに事業部長や経理部長は社長の役割を実現するためにどのような自己の役割を(社長から)期待されているのか、さらにその部下はどんな役割を期待されているのかをまずきちんと記述することがまず最重要論点となります。
ここで注意すべきことは、ここでいう役割とはいわゆる仕事、ジョブ・ディスクリプション(job description)ではないことです。仕事Jobは場合と場面によってすぐ変わりますが、役割は会社理念・使命・戦略から導出されたものですから1日では変わらないものです。戦略に源泉をおく、そのような役割のTreeを記述し、その各部長と部下の役割を果たすことで最初に設定した全社戦略も達成されるというロジックが重要なのです。
役割を記述してみよう。
特にこの「役割」の記述プロセスと個々の「役割」の重要度測定のプロセスには、現場の部長のコミットメントが不可欠だといえます。この現場部長のコミットメント(承認と強化)のプロセスがないと役割定義の納得性がなくなってしまい、単なる机上の空論となってしまいます。スムースな運用にあたって制度に対する上司の深い理解は不可欠です。重要なことは、役割定義の決定プロセスの中に上司のインタビューを必ず組み込んでおくことです。さらに上司がこの人事制度についてきちんと部下に事前説明をしておくことです。
役割説明のロードショー
いったん、記述された役割説明書は、秘密ではありません。役割を遂行することで、理念・使命・戦略が達成できるのだからです。そこで、記述された役割がどういうものになったかは、社内できちんと説明し納得を得なくてはなりません。これを役割説明のロードショーといいます。
この役割説明のロードショーで、何をすべきかといえば、
① 上司がスタッフに対してアナウンスメントと方向付けを明確にすること、
② 上司じしんがその役割の内容となぜそれが戦略合致なのかについてきちんと説明できること、
③ 上司じしんが、その考え方に共鳴し部下スタッフにその考え方を売り込むようにsellすること、
④ 不具合箇所についての最終判断は人事部の判断ではなく現場の判断にゆだねること、
⑤ 役割定義のプロセスの中で、スタッフの考え方を取り入れる姿勢をとること
などです。
役割を全部説明しきれるか?
ところで、役割(貢献度合)といっても、営業のように財務成績を示しやすい場合やバックオフィスでもビジネス・リエンジニアリングのようにプロセスの変革を目で見える形で変更でき効率アップを示せる場合は役割定義もしやすいといえます。
しかし場合によって、人は成績をあげて良くやったねといわれない場面でも企業は評価しなくてはいけない場面もあるのです。たとえばそのような例として、コンプライアンスがあります。また部下の育成という達成目標は直接営業目的には役立たなくても中長期的には上司の「役割」であるといえます。こうした側面での貢献を役割の中にビルトインしてはじめてそれが評価の対象に含まれていくのです。コンプライアンスを貢献役割にビルトインしないでおいて単に成果主義が行き過ぎていたとして成果主義自体を批判することはできません。要はいかに貢献度合を役割定義にきちんと落とし込むか、その設計を十分に行っていないとcorporate governance上の問題さえ生じるということなのです。