2009/10/15
対日直接投資激減の理由(その2)組織文化の違い
前回、外国企業の日本企業へのM&Aが大きく減っていること、それが不況脱出をめざう日本経済全体にとっても憂慮すべき事態だということ、しかし、それでも環境や介護分野でM&Aも増えていくという期待があること、などを記述しました。
しかし、本当の原因は日本企業の組織と人の考え方にあるのでは?
外国企業からすると日本企業の成長を支える日本人役員・従業員の考え方が、かなり理解しにくい部分があること、それが対日直接投資という長期的なカネの配分を日本に廻すことを躊躇させている原因になっているのではないか、と見ることもできる。これは日本企業の組織あるいは人々の行動様式についての違いについて、うまく理解できないからだともいえます。
「微妙ですね」というコメントの危険性
たとえば、TVのサッカー中継で耳にするある言葉があります。それは、解説者の口にする「微妙ですね」というコメントです。実況アナウンサーが「今のはオフサイドなんでしょうか?」という質問に、解説者は見解を明確にせず「微妙ですね。」で済ませてしまう光景です。
これに対して、サッカー批評家の吉田誠一氏がイングランドプレミアリーグのダイジェスト番組での解説者アンディ・グレイ氏を引き合いに、さらに辛口に批評します。
つまり、そのときある選手が2個目の警告で退場となったシーンです。これについてグレイ氏は「この判定は正しい。ただし・・・」と続けて、そこで画面が切り替わり最初の警告の場面にさかのぼります。「これを見てください。警告を受けるようなプレイではありません。これは誤審なのです。」と指摘。さらに話は進み「だからこの選手はいらだっていたんですね。プレイがラフになっていく。」そして退場につながる反則へと至るわけです。グレイ氏の結論はハッキリしています。「2つ目の判定は確かに正しい。しかし、総合的に見れば主審の最初の一つの誤審がこの選手を退場へお追いやっていったのです。」これはまるでミステリー映画で名探偵が事件を解明するラストシーンのような名解説だったと回顧します。
欧州の解説者の仕事ぶり
欧州の解説者は判定やプレイの選択が正しかったかどうか、失点の責任がだれにあるのか、をはっきり示します。それこそがプロの解説者の仕事というだけでなく、それ以前に他人に意見を求められたら明確に自己の見解を述べることが社会常識だから。
ところが、翻って日本ではどうでしょうか?
日本では「あいまいな態度」が許されます。それがむしろ道徳的とさえとらえられ、他人の責任をあきらかにするような物言いの仕方は品がないと思われます。だから解説者は「微妙ですね」を連発することになるというわけです。
この手の「態度保留」あるいは「意味不明瞭」がテレビ中継の場面だけであれば、まあまあ、「そういうあんたが審判だったら、どう判定するの?」というテレビの前での一人突っ込みでも済む話でしょう。しかし、これが指導現場でのコーチと選手のやりとりだったり、職場での上司と部下の関係だったりしたら、どうでしょう?
日本の職場では、たとえばミーティングや会議の場で、こんな「あいまい態度」や「意味不明瞭」がかなりはびこっているのが日本の職場の現実ではないでしょうか。
異文化コミュニケーション
このような例からみるように、グローバリゼーションを図る日本企業での海外PRや広報にも「微妙ですね」というコメントがあるなら、日本企業に投資したい、と思わせることはなかなか「微妙」ということになるのではないでしょうか?