2009/04/29
組織と構成員との間の心理的契約 (その3)
組織と構成員との間の心理的契約 (その3)
心理的契約の測定をするには。
心理的契約は、紙に書いたものではありません。働く人のこころの持ち様ですから、目に見えません。主観的な状態なのです。しかし、その主観的状態を客観的に測定することは不可能ではありません。
たとえば、従業員満足度調査や従業員意識調査(Employee Survey )は、その定点観測調査としての意味をもっていることがあります。 もっとも、ここでいっている調査は、従業員の企業(上司や経営陣)へのコミットメントないし承認や意欲の度合を示すもので、具体的には、従業員が企業(上司や経営陣)のことをどう言っているか、どう他社に言うか、どうして欲しいか、どの程度長く勤めたいかという側面をあきらかにするものをいいます。
またこうした従業員の経営陣承認度合いを明らかにするという直接的な調査のほかに、特に組織体としての特徴をそこに所属する個人の側からその適応不足であるストレス状態も含めて社会心理的に分析しようとする試みもあります。どちらも客観的に従業員の心理的契約の実態を「見える化」させようとするものだという点では共通するものがあります。
制度が、心理的契約に影響を与える
従業員意識調査などの測定の結果、頻繁に判明するものの中には、心理的契約に対して影響を強く及ぼすものがあります。たとえば、人事制度や賃金制度の心理的契約への影響は大きいものがあります。
これらの制度は、それ自体就業規則の一部をなしているので当然に従業員個人にも適用されてしまうわけです。それがどのような制度なのかまたはどのように運用されているのかについての認識は、心理的契約の有無や強弱に大きく影響を与えるといえます。
たとえば、自分のキャリアにとってこの会社の人事制度が役に立つものかどうか、公平な制度なのかどうか、努力を正当に評価してくれる仕組みとなっているかどうか、訓練やトレーニングの機会が十分あり自分がスキル面でも向上できるチャンスがあるかどうか、などを自分で納得できれば心理的契約は強化されますが、これが弱い場合には、逆に弱体化するのです。
これに似たものとして、人事部の態度(従業員に対するサービス意識の強弱)も好ましい場合は、心理的契約を強化するといえます。
心理的契約の当事者とは、誰ですか?
このように分析すると、従業員と会社の心理的契約の「当事者」は、従業員個人本人と、その直接の上司、トップマネージメント、同僚、人事部などであることがわかります。