2009/04/29
組織と構成員との間の心理的契約 (その2)
組織と構成員との間の心理的契約 (その2)
心理的契約の特徴
さて、今回は、心理的契約の特徴について、詳しく見ていきましょう。
i. 心理的契約は、働く人の情動を対象としています。この要素が極端に大きく、かつ、肯定的な場合には、労働条件が良くなく、いわゆるきつい職場であっても特に問題とすることなく働き続けることも多いといえます。
ii. 心理的契約は、働く人の情動を対象としているので、変化します。一定のものではなく肯定的にも否定的にも変化しうるものです。
バランスト・スコアカードと心理的契約の関係
バランスト・スコアカードにいう4つの条件、① 財務的目標、② 顧客・株主等の利害関係人から期待される目標、③ 事務プロセス等の合理化と効率化の目標 ④ 役職員の教育と成長の目標の4つは全て経営者や組織を設計する側の視覚から分析をしています。しかし、ここでいう心理的契約はこの4つの条件の全てを、その組織に参加する個人の側から下支えするまたは支持するモーメントとして捉えたものといえます。
仮に、バランスト・スコアカードの①~④の4つの条件がそれなりに存在したとしていたとしても、心理的契約が成立しない場合や、弱い場合には、これらを推し進める力やモーメントが不足し中長期的な成長をはかることができないのです。その意味では、組織を支える個人の側の心理的側面として、バランスト・スコアカードと表裏一体をなすものといえます。
心理的契約の「強弱」とは、何でしょうか。
心理的契約は、「あるかないか」という2者択一的側面だけではありません。 その情動の大小から心理的契約が「強いか弱いか」という側面とがあるのです。
もし、心理的契約がなくなりゼロとなれば、(雇用契約は継続して存在していても)いつ会社を辞めてもいいと思っている状態となりますね。それは、仕事に対する熱心さが失われ結果を求めることができない状態を意味します。
また、心理的契約が残っていても、その力が弱い場合も同様の現象となります。
心理的契約の強弱に影響を与える要素は、会社のビジョンやミッションとの共鳴性があるかないか、会社の評判が良くて、それに同一化できるかどうか、トップマネージメント(社長)や経営陣が日頃から何を語り、何をメッセージとして伝えているか(あるいは無言か)、上司とりわけ直接の上司(がどういう態度で自分と接しているか、そして職場の同僚(仲良くしてくれるか、親和性があるか)などが大きく影響します。