2009/06/11
マトリクス系組織の長所と短所
マトリクス系組織
マトリクス系の組織は、グローバル企業ではよく見かけるものです。 しかし、マトリックス系の組織は、このようになります。
このマトリクス系の組織は、最近は日本企業でも見られるようになってきました。この場合、たとえば九州地区のフランチャイズ営業については、フランチャイズチャネル部長とともに九州地区担当部長(兼代理店部長)が、ともに挙績責任を負うという複線構造になります。
トヨタの実例
世界のトヨタも、創業家出身の社長が就任し、新体制の下で2期連続の巨額赤字の解消と新たな成長戦略を描くことが求められています。そこでは「規模とスピード」を目指した大規模な改革がスタートします。その改革の中心もこのマトリクス経営です。
たとえば、「副社長5人」はそれぞれ「本業の責任」と同時に「地域担当の責任」を負い、海外5極体制で危機即応する計画です。
具体的には、副社長、布野さんは〈海外]担当で、かつ、地域は「中国、豪州アジア中近東、中南米アフリカ」、そして新美さんは〈生産〉担当で地域担当は「北米」、佐々木さんは〈調達、経営企画〉担当で、地域担当は「欧州」、一丸さんは、総務人事、国内販売〉担当で、地域担当は「国内」というわけです。人事部担当役員も、国内販売責任者なんですね。これがマトリクス組織です。
マトリクス系組織の特徴
その場合、挙績が上がった(下がった)場合に、地域戦略が原因かチャネル戦略が原因か、それとも商品戦略の失敗か、いったいどちらなのかという原因分析が必要となってきます。そのため、これを分析できるだけのITツール操作とデータベース構築がパフォーマンス・マネジメントにとって(コーチング技術などヒューマンマネジメント以前に)必須の道具だてとなるという特徴があります。
マトリクス系組織の長所
マトリクス系組織の良いところは、リソース配分が効率的にできること、つまり大組織特有の不要な人員をカットして必要な要員だけで成果を出せることです。
また、変化対応がすぐできること(ダメと決まればその一部の撤退の決定もしやすいという点)です。
その意味でマトリクス系組織は、少数精鋭で多機能化した営業組織にとって不可避の方向だとさえいえるでしょう。
トヨタのマトリクス経営組織の例も、現場にひそむ問題点をいち早く察知し、より現場に近いところで問題解決のスピートと徹底をはかる、という、いわば「機敏な巨艦」へ現場改革を推進するという目的があります。それはある意味で「小さなトヨタ」への回帰といえます。
また、複眼的な(four-eye’sつまり4つの目すなわち2人)責任体制は、ガバナンス上のメリット(リスクの相互監視)もあるといえます。
マトリクス系組織の弱点
他方、このようなマトリクス系組織にとっては、リーダーシップは、おそらく、管理の色彩の強いリーダーではなく、部下を信頼して、仕事と管理をまかせてしまうタイプのリーダーが、一番望まれるといえます。
その理由は、マトリクスを多用すると、複線構造の管理者と複数のヒエラルキーがパワー・ストラグル(権力抗争)を生み、チームメンバーに混乱を与えるという問題があるからです。たとえば、それぞれのマトリックス組織の長が自分のパフォーマンスに血道をあげ、お互いに責任のなすりあいやあやふやさを強めてしまう傾向があるのです。
これは、欧米のグローバル企業でも、繰り返し指摘されてきた事実です。CEOのリーダーシップがないと、マトリクス系組織も機能しない、というわけです。