2009/07/21
「人事の基本方針」の文書化?
「人事政策の基本方針」の文書化
ここでひとつ、質問があります。貴社では,企業行動方針,内部統制方針,プライバシー宣言などは取締役会で承認されているはずですが,「人事政策の基本方針」はどうでしょうか?
企業文化や組織風土は,トップが変わっても生き続ける『企業のDNA』だとよくいわれます。たとえば、「15%の自由」でイノベーションを進める米スリーエム社のように,「行動で評価し,他方,失敗は許容される」組織風土はすぐには作れないとさえいえます。
このように、組織風土は経営ビジョンと深く関係していることから,企業は経営意志として,『人事政策の基本方針』(企業経営者の責務としてどのような組織風土を醸成し,何に価値を置くのか,役職員のどのような行動を評価するのか)を策定しておく必要があるのです。
そのことは,事業戦略とそれを支える無形資産たる人のマネジメントの軸を一致させることでもあります。その意味で、強い戦略的意味をもつものです。
さらにはたとえ社長が交代しても人事政策がブレないようにする内部統制(コンプライアンス)上からも重要であり、このことは、従来以上に強調されてしかるべきでしょう。
また,中期事業計画書の中においても,ヘッドカウント(定員確保)だけでなく,その事業計画達成(例えば売り上げ10%増,店舗統廃合など)のために人事部としてどう貢献するかの『シナリオ』と『アクションプラン』(経費,達成時期,効果も)についても、コミットしなければならないはずです。場当たり的な人事ではなく、あくまで戦略との統合性のある人事戦略・人事政策をとる必要があるのです。その意味で、まず、自社の戦略に統合された『人事政策の基本方針』に従いながら、人事を推進するという手続が大切になります。
このことを説明責任の観点から見てみましょう。
企業は,成長(ないし阻害)要因をステークホルダーに説明しなければならないですね。IR(投資家への説明)や有価証券報告書などで,社会貢献や環境保護については説明されていても,企業の成長基盤である人材育成について深く言及されていますか?
このことは上場企業だけに内部統制や戦略性から必要になるだけではなく、むしろ中堅(中小)企業においても,これらのことはより強く当てはまるといえます。少なくとも自社のDNAを表現する「人事の基本方針」を取りまとめておくことは,例えば中途採用者に対してキャリアパスを示し,自分にふさわしい処遇を期待させる材料として非常に役立つといえるのです。