2009/11/09

エンパワーメント

322-1223113429gXAMエンパワーメントとは何でしょうか

主として2つの意味があります。
①  企業の中での個人の生き方について内発性を重視する考え方です。たとえば、個人が自分自身の力で問題や課題を解決していくことができる社会的技術や能力を獲得することです。具体的には、個人の社会的機能を本人自身の内発的な動機により向上させ社会生活に反映することまたそれらを促す支援方法を言います。(広義)
② もうひとつは、企業組織の中で、末端の担当者に権限を委譲したり、付与したりすることを意味することもあります。MBAでは管理中心に者を捉えるので、こちらの意味に捉える事が多いようです。具体的にはこのエンパワーメントによって各担当者は自分の判断で顧客ニーズに即座に対応することができるようになり、いちいち上司の指示を仰ぐ必要がないから、即座に顧客の依頼に対してすぐに柔軟に対応できるというメリットがあるというわけです。また、従業員にとっては自分の責任が増える分、常に自身の能力向上に努めるという副次的なメリットもあるのも事実です。(狭義)
このようにエンパワーメントには二つの異なった意味があるので注意が必要です。

そもそもエンパワーとは何だったのでしょうか。

もともと、このエンパワーということは、ソーシャルワーカーの言葉でした。生きる力をはく奪されたような人にその本来の力を発揮できるように支援することだったのです。その意味では、エンパワーメントは、むしろメンタルヘルス面での側面支援という感じの語感があります。

それは昔、20世紀初頭において、曖昧模糊たる人間よりもきちんとした機械的システムの優位性を企業内で指摘したテイラーから始まった人間軽視・機械システム重視の考え方を転換し機械システムよりも人間優先を主張した思潮がエンパワーメントの考え方の背景になります。人間優先という考え方が基本ということです。その意味では、寄り添って支援する、という考え方ですから、②のように権限移譲という結果には当然には結び付かないのです。

エンパワーメント イコール 権限移譲 だとした場合の問題点

しかし、実際は、権限移譲という「上から目線」の管理行動が、このエンパワーメントという考え方で補強され、正当化されたわけですが、実際はこのようにエンパワーつまり権限移譲するとよいことばかりで、現場では全く問題がないというわけではありません。

権限移譲のデメリット
1.顧客サービスレベルの不均衡
→顧客対応は各担当者に一任されるため、担当者によってサービスレベルに不均衡が発生する可能性があります。
2.困難な組織コントロール
→組織の管理機能を必要以上に取り除いた場合、組織としてのコントロールが難しくなるとはいえます。
3.不適応社員の発生
→全ての社員が自分の権限で決断し、顧客サービスを実施するのを得意とする訳ではありません。このような社員にとって権限委譲は必要以上の負担となり、生産性低下の原因ともなるともいわれています。

この意味で、権限移譲に伴う問題を回避するには以下のような手段を同時にこうじておくことが 組織を維持するには重要です。

1.加点主義的人事評価システムの構築
→ポジティブなミスが起きたとしても、そにに対する上司としては寛容な対応をすることを組織全体で認容する。
2.研修などによる社員教育の徹底
→常に社員全員のレベル向上に努める。

より根本的問題としては組織の管理機能を必要以上に取り除いた場合、組織としてのコントロールが難しくなるという問題があり、異質なことをする人を簡単に容認したり、最低限必要なことや顧客サービスとして求められる基準についてもエンパワーメントとして内発的設計と自主的実行にまかせてしまうのだとすると、いくら人間優先でも、期待される企業行動・価値は実現できないことになる、という根本問題をはらんでいることに留意する必要があるでしょう。これが人間論と組織論との違いといえます。


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