2009/12/06
サクセッション・プラニング
経営者を社内育成できるか?という課題
経営者を社内育成し、次世代リーダーを育成する、と言われることが多いですね。たとえば、アサヒビールにおける「アサヒスーパー塾」から「経営者養成塾」への進化(リクルートワークス研究所) によると、次世代リーダーの早期選抜を狙い、2000年からアサヒスーパー塾を実施してきた同社は、2004年からその進化形態である経営者養成塾を新たに開設したといいます。なぜ「進化形態」かというと、かつてのアサヒスーパー塾では600人規模だったものを、経営者養成塾では年間10数名とし、年齢も「30代のアサヒスーパー塾」から「40代の経営者養成塾」とし、よりマネジメントに直結するように設計したのだからだというわけです。
サクセッション・プランニング
アサヒスーパー塾のようないわゆる「社内大学」のような取組は、意外と多くの大企業ですでに実施されています。ソニー・ユニバーシティや富士通ユニバーシティも同様です。将来を嘱望される若手を選抜し、マネジメント理論や戦略、企業DNAを共有することが目的なのです。
そこでのゴールは、「アティテュード」(振舞い方)(ソニーの場合)や「人間力」の増強(富士通の場合)、エンゲージメント(企業への帰属意識)の強化(マクドナルドの場合)などです。つまり、このようにさまざまな表現で示されるようなマネジメント(経営層)としてそれに相応しい能力開発が目的だということになります。
もし、今、社長がもし急死したら?
今述べたことは長期的なサクセッション・プランニングという意味ですが、短期的には、現在のトップが急死したり、突然の不祥事発覚により取締役会が機能不全となったときの経営後継者の指定という、もうひとつのサクセッション・プランニング課題というものがあります。たとえば、マクドナルドでは2004年の年頭にグローバルのトップが急死したとき、4時間後にはナンバー2であった者が新しいトップと決まり、そのとき実際には世界中に 24人の候補者がおり、その中からナンバー2が新たなトップとなったといわれています。
部長が今出張中に事故死したら?
同じことは部長レベルでもいえることです。そして、社長や部長みずからがこの答えを持っている必要があるのです。これは、グローバル企業ではよくみられる人事戦略((注)「戦略人事」ではない。)上の現象で、日本企業では非常に意外な拒否反応が多いようです。外資系会社の社長に転職後にすぐ最初の本社トップ面接で、「あなたの最初の仕事はあなた自身のサクセッションプラニング、つまり後継者選びですよ!」と言われて度肝を抜かれて、もう早くもクビか、とショックを受けた、という笑えない実話もあるくらいです。
しかし、昨今会社法上の委員会設置会社の機能やCEOの選定プロセスの明確化という「企業ガバナンスの観点」からも、この部分はもっと光をあてていち早く日本企業においても「常識化」させるべきことがらと思われます。
要は、人事として誰がCEOに相応しいかということというよりも、むしろ手続のデュープロセス(正統性確保)とコンティンジェンシープラン(危機管理計画)としての意味が深くなるということなのです。