2009/04/29
バランスト・スコアカード
バランスト・スコアカード
今までは企業の業績向上というと売上高成長率や利益率の向上など、財務部門の指標が重要視されていました。企業がゴーイングコンサーンである以上、財務(数値目標)こそ最大関心事であることはいうまでもありません。しかし、これは結果であって、これをもたらす原因に作用しないかぎり、いくら財務目標を掲げて旗を振っても実現はできないのです。その意味で「原因なくして結果なし」。これからはもっと多面的に業績向上に取り組む仕組みが必要になってきます。たとえば売上という財務指標を向上させるのは、顧客満足度を向上させたり、新規販売先を開拓したり、適切なプロモーション活動を実施したりしなければいけないという意味でマーケティング部門の仕事でもあるのです。これらの指標は財務指標ではありませんが、業績向上に非常に重要な意味を持ってきます。顧客満足度などは財務指標に現れてきませんが、今後の業績を向上させる上でとても重要な指標ということになります。このような従来の財務諸表に偏った考え方を修正するために開発されたのが『バランスト・スコアカード』なのです。その根本の意義は、原因に作用して結果を得る、ということにあるといえます。
1992年、ロバート・キャプランとデイビッド・ノートン
バランスト・スコアカードを1992年にRobert KaplanとDavid Nortonが提案したのは,それまでの企業の業績評価が財務諸表(損益計算書,貸借対照表など)に偏っていたのではないか,との反省に基づきます。財務諸表は過去の業績は示しているが,今後の成長を見込めるかどうかは必ずしも示していないのです。平たく言えば,例えば従業員にやる気があるのかないのかを財務諸表から直接読み取ることはできません。
4つの視点
バランスト・スコアカードは、企業を『財務』、『顧客』、『業務プロセス』、『学習と成長』という4つの視点から評価していきます。各視点にはそれぞれ指標があって、たとえば、『財務』の視点からは売上高成長率、営業利益率、キャッシュフローなどがあるし、『顧客』の視点からは顧客満足度、マーケットシェア、新規顧客獲得数などが挙げられます。また『業務プロセス』からは納品リードタイムや不良品率、新製品導入率、『学習と成長』の視点からは従業員満足度、従業員離職率などが代表的な指標となります。
ということは、企業が安定的に業績を向上させるには財務面の指標ばかりに注意することなく、『顧客』、『業務プロセス』、『学習と成長』といった非財務面の指標にも注意してバランスよく業務を向上させる必要があるということを意味します。つまり、バランスト・スコアカードにはそのような4つの視点から各指標に有機的な関係性を持たせて最終的に業績を向上させていく効果があるといえるのです。言い替えますと、まず最初に『学習と成長』の視点から従業員の能力や待遇を向上させることによって、『業務プロセス』の向上が見込めることになりますし、『業務プロセス』の向上は顧客満足度に繋がり、最終的に業績が安定的に成長するというサイクルを描くようになるというわけです。
バランスト・スコアカードのメリット
企業を多面的に評価することにより、バランスの取れた経営戦略を立案し、ビジョンに沿った経営を行うことが可能になることがバランスト・スコアカードの考え方のメリットです。