2009/09/07
「テルモ」の制度改定について
今日の日経報道について
2009年9月7日、「テルモ、チーム単位で業務改善 開発など課題設定」との日経報道によれば テルモは課やプロジェクトチームなど小集団ごとに業務内容を見直し目標管理する制度をこのほど導入したとのことです。
個人で目標管理していた従来制度を改め、5人前後のメンバーが共同で中期目標を定めて運用します。テルモは医療機器の大手で、先進国の医療費抑制策などで経営環境が厳しい状況です。業務遂行の責任を現場に与えることで従業員に意識改革を促す狙いがあります。
本社や国内の営業部門と生産拠点で働く約4500人が対象。生産ラインや、製品の開発や設計、臨床試験にかかわるプロジェクトチームなど業務単位ごとに約650の小集団を設けました。小集団ごとに課題や改善策を設定してイントラネットで全社に公開。他部署からも評価を受けられるようにした。将来は人事評価制度に連動する仕組みにする方針。(07:00)
戦略人事の考え方
「人事は戦略実現のためにある」という戦略人事の考え方がいかに現代の企業組織にとって重要かは、この場面にも表れています。
なぜか?というと、そもそも戦略なんて当社にあるのか、という根本疑問だとか、たとえ戦略なるものがあったとしてもそれはシナリオにすぎず机上の空論で、そんなもので人事が動かされてたまるか、という反発がありがちです。人事部長も、本音としては、人事は聖域、触ってくれるな、中立で独立なのだから、という気持ちがあるように思えます。
「開発マネジメントは戦略に従う」
ところが、経営企画室という部門では、まったく正反対の考え方をするものです。つまり、まず事業戦略ありきで、その達成のために必要な人材を手配する、場合によっては、組織(ここでは体系的な指揮命令系統を定めた組織図やチャートのことをいう。)を変更することさえもいとわない。組織は「存在するもの」ではなく、「設計するもの」なのだという考え方です。朝令暮改にみえても、また、毎年組織変更するのでも、よしとする柔軟で目的的な考え方です。
今回取り上げたテルモもその一例です。
多くの企業の場合、研究開発プロジェクトを社内にいくつも抱えることが普通でしょう。そこで今何が起っているのでしょうか?
それは「内部の生存競争」です。つまり、複数の事業部門が多数の別々の開発プロジェクトを同時に走らせているのが現実。 しかも、5年計画で今始めたばかりで海のものとも山のものともしれない「種まきプロジェクト」のものから、3年計画の最後の年でもう実際販売がスタートした「収穫期のプロジェクト」まで、多種多様のプロジェクトを抱え込んでいるという現実があるのです。
当然、各プロジェクトは社内で予算と人材を「奪い合いながら」成果を出す必要に迫られる。(テルモ経営企画室佐藤慎次郎氏 日経2008年1月16日「十字路」)
ところが、経営企画室の認識としては、革新的な技術開発や事業開発をにない、引っ張ることのできる有能な人材はどの企業でも限られていると考えています。それならその有能なる人材をどこに重点配置するかについて、意思決定しなくてはなりません。そこで、カネを配分するようにヒトも配分する必要があるわけです。ヒトに仕事をあてはめるのではなく、仕事に合わせて、意図的に「動かす」つまり戦略にあわせて人事を取り仕切るというわけです。だから、戦略が人事を決めていく、と考えることになります。
そのような予算・人材の奪い合いの中では、「開発マネジメント」つまりこれら全体を「ポートフォリオ」として認識し、各プロジェクトに「適正な人材と予算を割り当てる」ことが戦略実現のカナメとなる。誰かが割り振りを決めなくてはならないのです。まさに、「開発マネジメントは、戦略に従う」といえるでしょう。今回のテルモの人事制度の改革も、2008年度に予定されていた戦略の実現に他ならない、と思います。