2009/07/17
「人事部が持つべき視点」とは?
人事部がもつべき視点
人事部の役割からみる「社内風景」
戦略人事が経営課題として屹立(きつりつ)している経営体制では,人事部の役割(立ち位置)からみる社内風景は,いかに経営戦略を現場に落とし込むかというところに核心が置かれるという意味で,CEOと同じような高所からの俯瞰視点からみた風景となるでしょう。なぜなら、人事に関するイニシアチブと新提案がビジネス目標達成そのものに直結しているからです。
大企業はもちろんのこと、特に中堅(中小)企業トップ,は、この意味で,人事部に期待する度合いが大きいと思われます。トップは人事部と一緒になって,小回りよく経営イニチアチブを生かせる組織を作る必要があります。また,インセンティブ(動機付け)が誰にもみえる分かりやすさを武器に,快適でエネルギッシュな職場作りに励めば,それが業績に直結し、そのことによる業績寄与が目にみえるからです。
そして,このことは、大企業であっても構造はまったく同じといえます。むしろ大企業こそ,組織が官僚化しやすいだけに,人事部が戦略落とし込みの一翼を担う役割意識をより強くもつ必要があるといえます。
新聞の会社人事欄
こうした社内風景とは別の視点から人事部の機能を見てみましょう。
たとえば、人事といえば会社人事欄は新聞に必ず掲載されている重要情報です。毎年6月は総会シーズンでそれが終われば新年度の役職者人事が紙上発表されますし、非上場企業でも投資家IRやディスクロージャー誌上で発表されるわけですね。会社人事欄を体系的・時系列的に見ていきますと、時代と戦略を反映した企業の姿勢やビジョン、組織の狙いなどが見えてきます。それどころか会社人事欄は日本の企業社会の実態を映し出しているのです。
たとえばある企業では、コンプライアンス担当責任者の職位は前年度までは副社長であったのに、新年度は平取締役になったとき、これは会社としてコンプライアンス重視の度合いが低下して、以前より軽く扱われるようになったということを意味するでしょう。これはある意味信用低下を意味するでしょう。
そればかりではありません。企業のグローバル化が進んでいるというのに、上場企業の組織人事発表の中にはチーフリスクマネージャー(危機管理担当)という担当役員が「見えない」というか存在しない(担当役員がいない)ことがほとんどです。これは世界的にはかなり珍奇な現象で日本ではリスクマネジメントが経営中枢を占めていないことがあきらか、といえます。これも信用低下を意味します。
このように、人事は会社の経営の中枢部分そのものであり、それを外部から「見られる」だけでなく、それで企業評価さえされてしまう可能性が高いという事実を忘れてはならないと思います。