2009/04/29
組織の病理
組織の病理とは
これまで企業の組織体系の5つの特質について論じ、理想の組織の条件を探ってきました。では、逆に、理想の組織がうまくいかない原因あるいはネガティブ要因というのを抽出できないでしょうか。このような「問題事例」や「病理」現象に対し、正面から解決策を提示することができないのなら、さまざまな組織論は現実の前に無力といってよいのです。とはいえ、こうした問題事例や病理現象が一切存在しなければ、良い組織なのかといえば、それは「健康な組織」とはいえても、理想の組織とまではいえないでしょう。
組織に求められた(期待された)結果が出ないとき、それが繰り返されると組織はきしみ始めるものです。不満がでるものです。しかし、どんなに問題を抱える不完全な組織であっても、また、仮に組織メンバーもスキルや能力の点で不足があったとしても、全体のトップライン(総売上高)が右肩上がりに上昇中のときは、組織に潜む問題性や病理は、表ざたにはならず、解決すべき課題とは認識されないのが現実なのです。
組織の病理現象はどのようなときに出るのですか?
では、どのような場合に、組織の問題が吹き出るのでしょうか? 経験的には、下記のような場合がランダムにあげられます。
① 年間計画で毎年の予算が3年続いて未達成のとき
② 取締役メンバーの精神的病理現象で組織に亀裂が出るとき
③ 経営陣の中にパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの問題を起こす者がいるとき
④ 社長のリーダーシップに欠陥があり、マネージメント能力もリーダーシップもなく、保全する力が強く、周囲の執行役員も極度の保全性をもつ人材しかいないとき。
⑤ リーダーやプロジェクトマネージャーにスキルや経験がなく、メンバーのほうがスキルや経験値レベルが高いとき。
⑥ 前向きの努力目標以外の必達目標が与えられ本来の仕事の足かせになるとき(たとえばコンプライアンス目標)
⑦ 外国人が社内に来て部下や上司になったとき
⑧ 急成長で極端に社員が増え個性の把握ができずに組織編制が手探りになったとき
⑨ M&Aで全く組織風土の違う会社に吸収されたり吸収したりで、組織が急激に予測不可能に変質するとき。
⑩ 多量の人材を同質のスキル・人材として多店舗展開に押し出すとき。
⑪ 中小企業で第2世代の経営者が創業者の後を襲うとき。
⑫ リストラ目標を達成しなくてはならないとき(景気の良いときに行うリストラは新しい現象なので、今後はこのような積極的リストラが増えると思われる)。
このような問題事例については、直接または間接に、前述の組織体系の5条件のどれかの不備に原因がある場合として説明可能な場合がほとんどです。しかし、②③④は、組織体系の5条件のどれにも原因がつながらない問題事例ないし病理現象でしょう。
そこにある現象の共通事項は、いずれも社長ないし経営陣のパーソナリティの問題があり、その結果、周囲が傷つき精神的または肉体的被害が出る点に特徴をもつといえます。(正確には、社長自身のパーソナリティに問題のある場合と、経営陣の一部にパーソナリティの問題があることを認識しながら放置して処理を怠る社長に問題がある場合とに分けられます)。