2009/04/29
フリーアドレスの効用とは。
フリーアドレスの効用
「人事は、戦略実行のためにある」という戦略人事の考え方では、たとえば「オフィス機能」だけを見ても、実は考慮すべき事柄は多いといえます。具体的にフリーアドレスについて考えてみましょう。
フリーアドレスのもつポジティブな価値
たとえば、ニホンのオフィス伝統の課ごとの「島(アイランド)方式」もいいですが、部門間横断のプロジェクトには不便です。「島」に陣取る部門上司とは別個の指揮系統のプロジェクトがあるとき、「島」に座りながらプロジェクトの仕事をすることは尻がむずがゆいですよね。そのために、プロジェクト用の多数のミーティングルームは、いくつものプロジェクトを複数同時平行で実施するための必須アイテムだといえます。
そうなると、恒常的に「島」を作る意味がなくなりますから、フリーアドレス方式のオフィスレイアウトを採用しオープンスペースで各自の席が毎日変わってもそう大きな問題にならないはずです。
営業部所属のヒトの隣に経理部のヒトが座れば、コラボレーションさえできて、面白いこと請け合いです。もっとも、隣り合わせに違う部署のヒトが陣取れば、「相互に批判精神」に火がつきそうですが、コミュニケーションがとれる結果、「相互理解」もまたできるというのは、このフリーアドレス方式ならではの素晴らしい効用だといえます。
フリーアドレスの光と影
フリーアドレスのオフィスレイアウトには同じ会社の違う部署の人と知り合いになるという効用やミーティングルームをたくさん作ってプロジェクト推進に役立つなどの副次効果があります。
しかし、実は少しぐらい人数が増えても簡単に吸収できる、つまりかなり多くの人数を弾力的に限られたオフィススペースに押し込めることができるという即物的コスト削減効用もあります。これは伸び盛りの会社や複数のプロジェクトが重層的に同時進行するような会社では、いつも固定の机と椅子を用意しておかなくていいだけの大きな財政上の合理化効果を生み出すのです。
今まで固定の机と椅子で慣れていた社員にこの新レイアウトを納得させるのは至難の業でこれもオフィス・マネージャーの腕の見せ所ではります。というよりも、多くの場合、フリーアドレスに対する反対抵抗勢力は多いからトップマネジメントの決断がむしろ必要な事柄だといえます。
フリーアドレスも万能ではありません
もっとも、フリーアドレスを実際に導入してみると経験上わかることでありますが、混み過ぎてあまりに隣に座る人が近すぎたり、ミーティングルームも混んで利用できないという状況になることがあります。そうなると、落ち着いて集中した仕事ができなくなるという欠点もでてきます。
それに「島方式」なら組織図とオフィスレイアウトが一致して誰が見てもわかりやすいのですが、フリーアドレスになると組織図は完全にバーチャルになってしまいます。一見してここが○○課であるという仕切りはなくなるからです。コンプライアンス経営の立場からは、どうかな、という感じは残りますが、それよりもレポーティングラインや権限規程をきちんと整備するほうが有意義でしょう。
フリーアドレスに問題がありそうだからといって「フリーアドレスが導入されている職場ではストレス負荷が存在し「燃え尽き症候群」になりやすくメンタルヘルス上の問題を生み出していることは間違いない」とまで断言してしまう(毛利一平氏「進む職場の情報化、新たな労働環境と心身の健康」産業医学総合研究所)のも、極端すぎるのではないでしょうか。なにしろもともとそのSEの被験職場はストレスの非常に強い職場だったのかもしれないのですから。科学的にみえて、そうでないように思えます。フリーアドレスと燃え尽き症候群との因果関係の研究は世界的にも報告されていない面白いフィールドワークのネタになるでしょう。