2009/04/24
金銭的報酬の意味
「金銭的報酬」の意味
従業員が金銭的報酬が全くなくて、ボランティアで奉仕することは営利企業ではありえないといえます。というのも、もともと雇用(労働契約)とは、従業員が仕事をする報酬を得る対価関係が法律上も前提となる関係だからです。
しかし、その金額をどう決めるかは、基本的には、企業(経営者)と従業員との合意で決める事柄です。
報酬を支払うのは企業です。では、企業は従業員への報酬支払に対しどのような態度をとるべきでしょうか?
金銭的モデルの意味
ハイ・パフォーマーとロウ・パフォーマーでは区別して対応しなければならないことは前述しました。そうでないと、ハイ・パフォーマーのモラル低下とロウ・パフォーマーの甘えを生み出してしまい、目標達成への動機付けはできなくなるのです。
人事方針の確立
まずは、給与政策の基本的スタンスとして人事方針を固めなくてはなりません。個人個人の業績による評価体系の確立とその評価を給与水準に反映させる仕組みの両方を整備することが大切です。
その場合、重要なことは特に後者、つまり個人評価を給与に反映させるための(会社としての)給与水準です。そこでは、ハイ・パフォーマーには業界トップ水準の給与をペイライン(基準給与水準)として導入し、高業績に報いることとすることが必要でしょう。そしてロウ・パフォーマーには貢献度をベースにマイナス昇給(現行水準からの引き下げの可能性)をもたせることになります。
これが、企業としての基本的な「金銭的報酬」戦略となり、このようなロジックの確立が人事方針の確立ということになります。
労働分配率とは何か。
このような金銭的報酬水準の決定ロジックから見れば、経済危機で報酬原資が減れば給与水準にもそれが反映され金額も減少・調整されることになります。では、報酬原資と給与水準との関係は、どうなっているのでしょうか?
労働分配率とは、
「付加価値に占める人件費の割合」
をいいます。というわけで、労働分配率が高いと、それだけ生産性が低いということを意味します。一般的にはおおよそ50%が労働分配率の基準になるといわれますが、状況によるといえます。
そして、この定義でいうところの付加価値とは、生産・販売等の活動により新しく生み出した価値(成果)で、シンプルに次の計算式で計算できます。
付加価値=売上高-外部への支払(原材料費・外注加工費・仕入などなど)
この定義でいうところの人件費とは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」に分配される部分であり、付加価値のうち人件費の割合がどれくらいかを表すのが労働分配率ということができます。
労働分配率=人件費÷付加価値
この計算式の人件費は総人件費のことをいい、給与だけでなく通勤費や社会保険コストも含みます。
経済危機と従業員給与との関係
経済危機の中で、従業員給与だけを聖域として予算(人件費)削減しない、というわけにはいきません。どうしてでしょうか?
GDPは国内で生み出された付加価値の総合計を指します。企業の損益計算書でいえばほぼ粗利益に該当するものです。GDP(国内総生産)のうち給与など人件費に充てられる部分は「労働分配率」と呼ばれ、平均して60%程度。労働分配率が大幅に上がらない限りGDPが低下すれば人々の給与も下がるとの予測が成り立つのです。(日経産業新聞平成21年2月3日記事)
そこで、実際に内閣府が2009年3月12日に発表したGDPを見ると、前期比年率12.1%減と過去2番目に大きい減少率を記録しています。(日経新聞同3月13日)そうなれば経済危機「後」に備えて労働分配率を維持、いやむしろアップするという方針を採らない限り、人々の給与実額はこの分少なくとも下がるという予測がなりたつことになります。